経済産業省が令和4年5月に示した「未来人材ビジョン」によれば、デジタル化の拡がりと深化に伴うAIやロボットの活用は、労働市場の両極化を生みつつあるという。
労働市場の両極化とはAIやロボットに代替される職務は減少し、人の手を欠くことのできない職務と高いスキルが求められる職務に担い手需要は集中していくこと。
例えば、製造/販売/事務職は縮小する一方で、医療・福祉の対人サービスと専門/技術職は増加していくなどが挙げられます。
取り分けITエンジニアの不足は労働市場の両極化を物語っている一つの証拠と言え、これらが影響して「リスキリングとはIT系スキルを学ぶこと」という風潮が何となく支配的になっています。
リスキリングは「キャリアアンカー」ありき、が重要
リスキリングとはIT系など特定分野のスキルを学ぶことを意味しません。これまで概略の理解はあっても体系的には学んでこなかったスキルや、キャリア選択によってチャレンジすると決めた新しいスキルがリスキリングの対象となるのでしょう。
スキルを学ぶも活かすも、モチベーションがしっかり備わっていて持続性がなければ真価を発揮できません。その意味でモチベーションと持続力の源泉である動機や欲求、価値観の”まとまり”を示すキャリアアンカーが根っこにあることが重要なのです。効率性や効果性を担保するためにもリスキリングはキャリアアンカーありき、であるべきなのです
リスキリングはあくまで手段
少子化による労働力人口の減少、人生100年時代を背景とした職業生活の長期化、そしてデジタル革新に伴う産業構造の転換など激変していく環境に適応していくためには、私たちビジネスパーソンはこれまで以上に能力やスキルを絶えず更新していく必要があります。
またスキルを磨く責任は私たち”個人”にありますが、キャリア自律は自己実現のためだけではなく、”組織”の創造力を高め業績の向上に寄与するためでもあります。
従って組織は自社の従業員が自律的キャリアを形成するための手段としてリスキリングを奨励&支援する必要があります。リスキリングのステップは以下の通り
[1]キャリアアンカーを探索する
[2]必要な能力やスキルを明確にする
[3]リスキリングの対象を定める
[4]スキルを活用するプランを立てる
[5]リスキリングの実行
組織は従業員の多様な働き方を受容し、定着率を高めることにより人材不足へ対処する。職業生活の長期化を見据えたミドル後期~シニア世代の活用など様々な人事課題を解決させるためには、
「キャリアサバイバル × リスキリング」が有効なのです。
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