賃金競争の本質は何か その影響と未来への展望
- 大池 諭

- 4月23日
- 読了時間: 3分
人が辞めること自体が企業の存続を揺るがす時代
2025年度の帝国データバンクの調査では、人手不足を要因とする倒産が441件に達し、過去最多を更新したと報告されています。また、従業員や経営幹部の退職を直接の要因とする「従業員退職型」倒産も118件と過去最多となり、人が辞めること自体が企業の存続を揺るがす時代になっていることが明らかになりました。賃上げムードが続く中で、給与水準を上げるだけでは人が定着せず、企業の体力差がそのまま人材確保力の差として表面化しています。
成長支援への投資差が影響している
ただ、現場で企業支援をしていると、倒産の背景にある本質は「賃金競争に負けた」ことではないと思えてなりません。それは企業ごとの“マネジャーの成長支援への投資差”があると思います。若年者の離職理由を丁寧に聞くと、「成長している実感がない」「相談できる上司がいない」「将来の姿が描けない」という声が圧倒的に多く、これは裏を返せば“マネジャーが育っていない”ことの影響だということです。
自分にしていないことは、部下にもしない
成長するマネジャーの共通点は、①自分のキャリア観を持っており、②目標が明確、③自分の成長に関心があるから啓発に取り組んでいる。だからこそ部下の成長にも自然と関心を持ち、仕事の意味づけやフィードバックが丁寧になります。これは偶然ではなく、企業がマネジャーに対してどれだけ成長機会を与えてきたかの結果です。一方、キャリア観を持たないマネジャーは、目標を持てておらず、部下の成長にも興味を示さないから自分の経験を押し付ける指導しかできません。
帝国データバンクの数字が示しているのは、単なる“数”の不足ではなく、「マネジャーの成長支援を怠ってきた企業ほど、人が辞め、事業が続かなくなる」という構造なのです。賃上げ競争が激しくなるほど、マネジャーの質が企業の魅力を左右し、エンゲージメントの安定性を決定づけます。給与は市場が決めますが、マネジャーの質は企業が人材投資によって高めるしかありません。
人材投資とは教育ではなく成長支援である
私が現場で見てきたのは、マネジャーの成長支援に投資してきた企業ほど、若年者が辞めず、採用も定着も安定するという事実です。逆に、マネジャーを放置してきた企業では、どれだけ給与を上げても離職が止まりません。人手不足倒産が過去最多となった背景には、こうした“マネジャー育成の格差”がそのまま企業の生存率に影響する時代になったという現実があるのです。
では企業の人事は何をすべきか、それはマネジャーの自律的なキャリア形成への投資です。今だからこそ取り組む意味があり、価値があるのです。




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