新キャリア・アンカーの解説
- 大池 諭

- 10月4日
- 読了時間: 3分
更新日:10月9日
「キャリア・マネジメントとは」の続編
アップデートされたキャリア・アンカーの活用について解説します。

現代のマネジャーの中心的な役割は、「部下の自律性を引き出す」、「成長機会の設計者」であるとお伝えしました。この役目を遂行するためには、上司は部下のキャリア・アンカーを把握することが必要です。そして部下が将来に必要とする力を得るために、キャリア・アンカーの発達を支援することが上司の役割となります。
キャリア・アンカーとは「ゆずれない価値観」を示すもので、ほとんど変化しないとされてきましたがアップデートされたEdision5では、キャリア・アンカーは環境の影響を受けて変化するものであり、望むキャリアの方向に意図的に発達、変化させることが大切だとされています。
もともとキャリア・アンカーは米国の心理学者エドガー・H・シャイン(1928年 - 2023年1月)が、組織内キャリアを形成するための職業的自我を8つの切り口で表現した概念であるので組織社会におけるキャリア形成を前提としています。
つまり他者との関係性を無視して、自己のキャリア形成は完結しないので、他者の期待をキャリア・アンカーに寄せて受け容れ、実践を通じて環境に適応していくことが自律的なキャリア形成のゴールとも言えるのです。
自分は何を重視したいのか? 自分にとって大切な人々からは何を期待されているのか?
キャリア・アンカーを羅針盤に両方の折り合いを付けられるようにすることが大切です。
ではマネジャーがその”役割”を果たすために、キャリア・アンカーをどのように活用すると良いのか具体例を紹介します。

上図は20代後半のZさんのキャリア・アンカーの診断結果です。
※青は現在のアンカー、オレンジは成長の意図を示すGrowthアンカーです。
◆現在のキャリア・アンカーの考察
青の「GM_経営管理」はスコア0を示していますが、20代でかつ管理職の経験がないのでこの結果は必然とも言えます。「S&S_保障・安定」と「C&R_挑戦とリスク」は対角にあり、一般的にはどちらかに寄る傾向にあるのですが、両方とも高く出ているのでZさんのバイタリティの高さが窺えます。
◆Growthキャリア・アンカーの考察
オレンジは一律に高スコアとなっていて特徴的です。「AU_自律・独立」と「EC_起業家的創造性」は青とのギャップが大きいので、Zさんの課題設定の焦点となります。
ZさんはGrowthアンカー全体を重視しています。様々な分析が考えられますが、成長意欲は高いもののキャリア形成の明確な方向性を持てていないのは間違い無さそうです。
Zさんは自立的に自己の判断で仕事ができるようになることが重要と思っているので、今のZさんに任せられる仕事は何か、または任せたいと思う仕事を自立的に遂行できる力量を持てているのかをマネジャーはフィードバックしてあげることが大切です。
Zさんが「AU_自律・独立」を発達させるための啓発的経験につながる仕事の割り当てを行うのも必要です。
またZさんは創造性の発揮や会社の成功を自分の能力の証明にすることが重要と思っているので、C&Rアンカーの高さを生かしてチャレンジングな目標を示し、ミッションを与えるなどをすると成長の加速が期待できそうです。
このようにキャリア・アンカーを上司と部下の共通語に据え、部下のキャリア形成が充足されるようなキャリア・マネジメントが求められるのです。
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